イキガミ

先日、イキガミを見てきました。とても怖い映画でした。おばけが出るとか、そんな怖さではありません。人間の怖さを感じた映画でした。イキガミという紙を配達する松田翔太はある制度に疑問をもっている。ある制度とは小さい頃の予防接種にて国民の0.1%が18歳から24歳の間に死を迎えるようにされるというもの。その死を伝える紙を死の24時間前に当事者に渡すのが彼イキガミの役割。
なんて理不尽な制度でしょう。でもこれで死を感じ、命の尊さを知るという主張はあながち間違いでもないように私自身も感じました。だからといってこれはやはりおかしい。正直、死んでもいいと思ってしまうような人はいくらでもいるわけですが、彼らが死に至るとは限らない。なんで彼がという場面が多々発生する。映画の中でもそうでした。そしてそんな風に思ってしまうような人たちでも死んではいけない理由があるはずです。
一方、死がくるということで追い詰められた形になると新しいもの素晴らしいものが生まれるというような表現もされていました。それもあるでしょう。しかしその反面、彼・彼女の死を悲しむ人はいるのです。死ぬ人がいる反面、それによって何かを得る人がいる、何かをなくす人がいる。不幸になる人もいれば、幸福になる人もいる。これって今のこの世界のすべてのことにあてはまるのではないでしょうか。全てに表と裏があるのです。だからといってです。人間が生命を操る権利は無いはず。そんな死は美化されるものでありません。命の尊さを知る為にそこまでしないといけない人間という存在に恐怖を感じながらも、登場人物たちが見せる生への光に何か希望と活力を感じる、そんな映画でした。